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鬼畜友人「今回の罰ゲームだけど、おまえのゆっくりさんとあしゅらの仲の良さに萌えたから、小話書いて公開しろ(要約)」
うp主「ちょ、おま」
そんな羞恥プレイ。
・この話はデータ2、所謂あしゅら吹っ飛びデータを元に書かれています。
・ゆっくりとうp主は普通に新桃世界の住人で、桃太郎の旅に同行しています。ただしお供以下の非戦闘員扱い。
・風神の谷の平均48キロ制限はなかったことになってます。
・うp主視点。一人称は自分。
・唐突に始まり、唐突に終わります。
・要するに痛さ全開です。
・本当に誰得なんだろう。
・地味に12日に大幅加筆修正入りました。
・次回はまた負けたら……って負けてたまるか!
・それでもいいという海のように心が広い方のみつづきをどうぞ。
友人との勝負に負けた。ただそれだけの理由で、桃太郎の鬼退治に同行しその内容を記録する羽目に陥ったのだから正直笑えない。別に鬼と戦えと言っているわけではないからと笑顔で背中を全力で押した彼女は、まさに鬼畜としか言い様がなかった。
よりにもよって以前スリの被害に遭ったことがある銀次に慰めの言葉をかけられつつ、嫌々旅立ちの村を出発してからかれこれ一ヶ月近く。前ほど嫌ではなくなったものの、激化していく鬼との戦いに旅を楽しむ余裕など皆無である。
そんな自分とは違い、相棒であるゆっくりさんは出発してから今まで彼女の顔が曇ったところなど見たことがないぐらいこの旅を楽しんでいる。最近では仲の良い“マブダチ”が出来たこともあり、きっと彼女はこの先どんなことがあろうともこの旅を楽しみ続けるのだろうな、と漠然と思い、同時に羨ましくもあった。
それが浅はかな考えでしかなかったと気がつくのは、そしてこの旅の危険さを再認識することとなったのは、全てが手遅れになってしまった後だったけれども。
「そういえばゆっくりさんとあしゅらって、何時の間にそんなに仲が良くなったんですか?」
神々の里の周囲を覆う鬱蒼とした森を抜け、高い山々の切れ目に位置する谷の関所の方へと足を運びながら、常々気になっていたことをゆっくりさんに問う。
最初はあしゅらの格好のあまりのギリギリさに混乱しきっていたくせに、何時の間にやら一番懐いているのだから人間(といってもゆっくりさんはおまんじゅうであしゅらは鬼だが)不思議なものだ。
「ふふふ、うp主には教えないよ」
含み笑いを浮かべながら、いつものようにバッサリと切り捨てる。正直期待はしていなかったが、こうも見事にバッサリとやられるとそれなりにへこむ。自分は一応相棒であるはずなのに、彼女には弄り対象として認識されているらしく実に容赦ない。
「……相変わらず自分には、っていうかあしゅら以外には厳しいですねゆっくりさん。本当にどうしてあしゅらがゆっくりさんの心を掴めたのか果てしなく気になるんですけど」
「まあ、話すと長くなりますから、この谷を抜けてからゆっくりとお話しますよ」
あしゅらは軽く微笑みながらそう返す。
予定ではこの谷を抜けた辺りで野宿する予定なのだ。
「ゆっくり話していってね!」
「……言うと思いました」
このときはまさか「この谷を抜ける」ことすら叶わないなどと、その場にいる誰一人として予想だにしていなかった。
「おい、あれゆっくりじゃないか?」
金太郎のその言葉に、ずれた眼鏡を掛け直しながらそちらを見る。
神々の里周辺の木々の中でも一際高い木の天辺に引っ掛かっている真ん丸の生首……もとい、おまんじゅう。そのクリクリとした目と人間ならば肩につくかつかないか程度までの長さの黒髪、そしてそれを纏めている濃い目のピンク(どちらかといえばマゼンダが近いかもしれない)のリボンは、紛れもなく自分の相棒であるゆっくりさんのものだ。
「どうも、髪に枝が引っ掛かって動けないみたいですね……」
「しょうがねえな。オラに任せろ!」
そう言ってするすると木を登っていく金太郎を見上げながら、ゆっくりさんの無事に安堵し、同時に気が重くなった。あしゅらがまだ見つかっていないことを、彼女にどう話したらよいものかと。
『ぴゅるるるるぅ! わが友風よ! われに力を! 樹木をねこそぎ海の波がしらをさかまけ!』
『まずい、この風向きは……ゆっくりさんっ!』
『……あしゅらっ!?』
ゆっくりさんを庇い、風神の風に吹き飛ばされたあしゅら。
それを目の当たりにしたときのゆっくりさんの表情とその直後の取り乱しっぷりは、相棒である自分ですら今まで見たことがなかった。
結局最終的には全員散り散りに吹っ飛ばされてしまったわけであるが、それから彼女はずっと泣いていたのだろうか。高い高い木の天辺に引っ掛かっているゆっくりさんの表情は、そこから数十メートル下にいる自分にはわからなかった。
風神によって散り散りに飛ばされたメンバーのうち、見つかったのは金太郎とゆっくりさんだけだ。桃太郎の三匹のお供と夜叉姫、そしてあしゅらはまだ見つかっていない。桃太郎共々旅立ちの村まで吹っ飛ばされた自分はそこから今までに立ち寄った場所全てを捜して回っており、この神々の里周辺が最後となる。つまり、この周囲にいなければ彼らは未知なる場所に飛ばされたことになるのだ。
未知なる場所。その中には今まで桃太郎が救ってきた村々のように、未だに鬼の脅威に晒されたままの場所もあるだろう。もし彼らが飛ばされたのが、その真っ只中だったとしたら。
裏切り者とはいえ、伐折羅王の実の娘である夜叉姫に対する処遇はそこまで酷いものにはならないだろう。いくらカルラでも下手な真似をすれば伐折羅王やダイダ王子の怒りを買うであろうことぐらいはわかっているはずだ。尤もカルラは伐折羅王に己に都合のいい嘘八百を並べ立ててばかりだというから、そこも上手く捻じ曲げてしまうかもしれないが。
それでも一応姫君である彼女は、最低限の安全は保障されていると考えていいだろう。風神もその辺りは考えて飛ばしてくれているかもしれない。
だが、あしゅらはどうだろうか。えんま様の懐刀たる彼は、敵となった今カルラにとっては邪魔者以外の何者でもない。捕まえたのをこれ幸いとばかりに処刑しようとしても何も不思議ではないだろう。そこまでいかずとも、何らかの危害を加えられている可能性は非常に高い。
それらを口にしてしまえば――口にせずとも時折妙に鋭い彼女のこと、あしゅらが未知なる場所に飛ばされたと聞いて捕まった可能性を連想しないはずがないが――ゆっくりさんは間違いなく助けに行くと言うだろう。勿論彼がどこにいようと助けに行くのは当然であるが、居場所がわからなければ助けようがない。わかったとしても現状でそこに行く手段がなければ同じことだ。そして行く手段があったとしても、それこそ地獄の底のような場所であったら……。
それでも彼女は彼を助けに行くと言って譲らない、そんな光景が容易に想像出来る。最悪、桃太郎たちから離れて危険な単独行動をしてでも助けに行くと言い出しかねない。
かといってあしゅらのことを隠したところで、そんな嘘はすぐにバレる。あしゅらがパーティーにもゆっくり城にも不在である時点で不審に思わないはずがないからだ。
あしゅらが吹き飛ばされたとき、本来は彼ではなくゆっくりさんが飛ばされるはずだった。だが風向きに気がついたあしゅらがゆっくりさんを突き飛ばし、その身代わりとなった。おそらく彼はその方角に飛ばされると危険であることを知っていたのだろう。知っていて、それでもゆっくりさんを庇ったのだ。
本当に何時の間にそこまで仲が良くなったのか。おまんじゅうと鬼の間に芽生えた奇妙な友情に微笑ましくなると同時に切なくなる。そしてそんな微笑ましい二人を引き裂いた風神を、否、カルラを、心の底から憎いと思った。
金太郎に小脇に抱えられ、ゆっくりさんが木から下りてくる。その目は明らかにここにはいない誰かを――あしゅらを捜していた。
ゆっくりさんがあしゅらのことを聞き、号泣するまであと数十秒。